【プロローグ】

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 見慣れない森の中を、生い茂る木々を避けうねる木の根を飛び越え先へ先へと進み続ける。ゴリラもどきが鬼気迫る勢いで追ってくるもんだから、一瞬も気が抜けない。  てか、あれ? この鬼ごっこが始まってから五分くらいか。ゴリラもどきはすごいペースで追ってきてるにもかかわらず、オレとの距離は少しも縮まっていない。オレは足の速さも体力もほどほどくらいの…… 「ふぎゃっ!」  はずなんだけど、と思考を続けようとしたところで、何かに顔面からぶつかってしまった。 「なんだよこれ」  目の前には何もありはしない。今まで走っていたのと同じ薄暗い森が続いている。にもかかわらず、それより先に進めない。そこに見えない壁でもあるかのように伸ばした手に固い感覚が伝わってくる。 「どうなってんだよ!」 苛立ちまぎれに蹴りつけるが、何も起こらない。  どうする。そう考えると同時に首筋に嫌な感じがし、とっさにその場を飛び退く。その直後。  ズドン、と鈍い音とともに俺が立っていた場所に大きなこぶしが振り下ろされる。  何とか一発目はかわせた。でも、そのために全力で、飛んだせいで今オレは地面に転がっている。この姿勢では、振り上げられた二撃目はかわせそうにない。 「ちくしょうっ」  強く目を閉じる。けれど覚悟した衝撃は襲ってこない。  疑問を感じつつゆっくり目を開けると、巨大な青いゴリラもどきは何かにおびえるようにあたりを見まわしていた。そして、その視線がとある一点に定まった時、 「今回は当たりかしら?」  鈴を転がすような声が聞こえた。
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