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「スライムそのものは危なくないよ。でも、スライムがいるってことはこの近くに『彩色空間(さいしきくうかん)』への入口が開いてるってことなんだ」
焦っているのかクリスは早口になっている。
「彩色空間?」
「さっき地脈について説明したでしょ」
転移の説明のときに聞いたやつか。たしか、
「世界そのものに流れる魔力のことだよな」
「そう。その自然に流れる魔力が偶然『空白(ブランク)』に書き込んじゃってできる小さな異界が彩色空間っていうんだよ。スライムはその異界が生まれるときの魔力の切れ端が集まったものなんだ」
ようするに、さっきの絵の説明でいうならスライムは絵の具の余りなわけか。
「しかも彩色空間がうまれるときはいっしょに『空白獣(ブランカー)』って呼ばれるモンスターも生まれるんだ。そいつは彩色空間の核になっていて倒せばその空間は崩れるんだけど、空間を守るために入ってきたものには襲い掛かってくるんだよ」
『空白獣(ブランカー)』、どっかで聞いたことあるような?
記憶をたどるとあの冬の日にたどり着く。あのときのゴリラを着物の少女は『空白獣(ブランカー)』と呼んでいたはずだ。
ということは、彩色空間てのはあの不思議空間のことか。
俺の家に訪ねてきた魔法学園の職員を名乗る人は言っていた。魔力に目覚めた人間はあの不思議空間に巻き込まれやすいと。
早くこの場を離れないとまたあの世界に巻き込まれて化け物に襲われるわけか。
「たしかにクリスの言う通りここから離れた方が良さそうだな」
「うん。それじゃあ着いてきて」
先行するクリスに急いでついていく。でもそれも長くは続かない。
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