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「『空白獣(ブランカー)』って彩色空間の大きさによって強さが変わるんだ! 見かけたのは一匹とはいえスライムが生まれてるってことは今回の彩色空間は結構大きいよ!」
マジか、スライムが強さの基準になってんのか。冬のときはスライムなんて見なかったしヤバいかな、とは思うものの、
「………………」
女の子は、めっさキラキラした目で見つめてくる。これは今さら無理とは言えんよなぁ。
「それで、お父さんとやらはどっちにいるんだ?」
「あっち!!」
「了解、お父さんとやらはオレに任せとけ」
助けられる根拠なんて持ち合わせてはいないけど、とりあえず胸を張る。
安請け合い、無責任、ただの気休め。悪い癖だと妹に何度も笑われてきたけど、無駄に不安をあおるよりはいいだろう。気は休まるわけだし。
「クリス、この子頼むな」
話すと思い切りが鈍りそうだし、言いっぱなしで走り出す。
後ろで呼び止めようとしていたクリスだけど、少女に飛びつかれた上おねーさんと呼ばれて慌てていた。ま、そっちは任せた。
強化した脚力をフル活用して、木々の間を走りぬける。
途中で二匹ほど見かけたスライムをスルーしつつ、内心さらに危険度が上がったことにビビッていると、
「あー、こういうのがあるわけか」
目の前に渦状の何かが立ちはだかっていた。水色の有色透明の渦の向こうは、景色がゆがんでいる。たぶん空間の歪的なアレなんだろう。
「出入り口とかあったのか」
疑問に思わなかったけど、そういやさっきの子は彩色空間で襲われたはずなのに外で泣いていた。
主モンスター的なのが倒されて空間が消えてくれたなら楽だったんだけど、コレ見るとそうは思えないよなぁ。
とりあえず片手を突っ込んで、すぐ引き抜く。うん特に何もない。これならオレの考えがはずれて、この渦が彩色空間への入口じゃなくても、害はないだろう。
深呼吸をひとつ。腹に力を入れて、オレは渦へと踏み込んだ。
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