【第一章 赤の魔女】

30/40

4604人が本棚に入れています
本棚に追加
/353ページ
「おおー、すごっ!」  目の前に広がったのは氷の森。青く透き通った木々がそびえ立ち、光を反射して輝く景色に現状を忘れてただただ引き込まれる。  あ、でも足元は普通に土なんだな。ところどころ氷の木の葉が降り積もってるけど、走るのに邪魔になりそうなレベルではない。  氷の森に、さっき出会ったのは青いスライム。スライムがこの世界の切れ端なこと、この世界の核に当たるのが『空白獣(ブランカー)』とかいう化け物なこと、あわせて考えるとまあ十中八九ここの『空白獣(ブランカー)』は青の属性だろうな。  前に会ったゴリラも色からしてたぶん青の属性だったろう、でもあの時の世界はただの森だった。  あのときのゴリラより数段強い奴がいる気がするのは、気のせいであってほしいなぁ。  辺りを見回しても人影どころか動くものは何もない。探すのに手間取りそうと嘆くべきか、モンスターに出くわさなくてラッキーと思うべきか。  どちらにしても、動かないとどうにもならない。手がかりになりそうなものもないし、とりあえずまっすぐ行ってみよう。  氷の森を迷わないように定期的に足元の土を蹴りつけて跡を残しながら、おっかなびっくり進んでいく。時折氷の落ち葉を踏んでしまって案外でかい音に驚くことはあったけど、それ以外は特に何もない。  これはお父さんとやらが逃げ切ってくれてるパターンか。それならオレもさっさと逃げ出せるんだけど。  なんて期待したのがまずかったのか、 「くらいやがれ化け物。青の書1章1節【流水(ストリーム)】!!」  右手側から渋い声での詠唱が響いた。  ……さすが物欲センサー。いや、この場合物欲じゃないけどさ。
/353ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4604人が本棚に入れています
本棚に追加