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声の下方向へ走る。とりあえずは様子見を、と思ったわけだけど、
「畜生、間にあえっ!!」
木々の向こうに見えた光景に一気に踏み込みを強くする。
オレの目に飛び込んできたのは地面に倒れ伏すガタイのいいおっさんと、それを丸呑みにしようとする馬鹿でかい青色のライオンだった。
今から滑り込んでもおっさんを抱えて飛びのけるかは微妙か。なら、
「うりゃぁぁぁぁああああっ!!」
走る速度をさらに上げ、その勢いのままに青ライオンの横っ腹にとび蹴りをかます。
「グギャアッ」
ズドンと重い音が響いて、青い巨体が氷の木々を巻き込んですっ飛んで行く。
おいおい、【身体強化(リーンフォース)】って全開だとこんな強いのかよ。自分でやっておいてなんだけど、あんまり綺麗に吹っ飛びすぎて逆に引くわ、これ。
まあ、今はそんなことより、
「えっと、大丈夫かおっさん?」
素人目には、ボロボロではあるけど手足が折れてたりはしてないっぽいと思うんだけど。
「ああ。魔力はすっからかんだが、体の方は大丈夫だ」
「そりゃよかった。で、えっと……」
そういや、さっきの娘に名前訊いてなかったか。訊いときゃ、この人がお父さんとやらか確認すんの楽だったんだけどな。
「んと、あんたが娘さんを先に逃がした人ってことであってる?」
「!! 娘に会ったのか!?」
おお、話が早くて助かる。
「ああ、娘さんに頼まれて助けに来た。あの娘なら仲間が保護したから大丈夫だぞ」
「そうか、良かった」
ありがとう、ありがとうと泣きながら何度も感謝される。うれしいけど、むず痒いよなこういうの。
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