【第一章 赤の魔女】

33/40

4604人が本棚に入れています
本棚に追加
/353ページ
 あとは適当にあのライオンもどきをまいて、オレもこの空間から脱出すれば万事解決。と思ったのもつかの間。 「グガァァァァァァアアアアアアッ!!」 「ライオンてこんな速いんだっけぇぇぇぇぇぇええええッ!」  彼我の距離はみるみる縮まっていく。というか、ライオン云々関係なくコイツ図体デカい分歩幅もデカいわ。  向こうは氷の木々をへし折って走ってるのに全然引き離せねえ。  時たま氷の落ち葉を踏んで滑りそうになるも、なんとか踏みとどまって走り続ける。  『空白獣(ブランカー)』とやらの強さとこの空間の大きさは比例してるらしいし、後ろの青ライオンは冬にあった青ゴリラよりあからさま強そうだから、この空間は冬のやつより大きいのは間違いないと思う。  とはいえこのまま走り続けていたら確実に冬みたいにこの空間の端にぶち当たる。 「どうすかなっとぉおっ!!」  なんだ今の! 頭のすぐ横をなんかが、ってうぉっ!!  後ろから拳大の氷のつぶてが次々と襲い掛かってくる。あいつ遠距離攻撃までもってやがんのか!  木々や木の葉だけでなく氷のつぶても、って無理だろ。オレ後ろに目とかないし。  背中にガンガン当たって痛いけど【魔力障壁(ウォード)】のおかげで、我慢できないほどではない。  無視して走りきる、と覚悟を決めて衝撃で倒れないようにだけ気を付けて走っていると、パタリと背中への痛みがやむ。 「ん、なんだ? て、うぇぇぇえええ!?」  なんかさっきも出より格段にデカい、オレの体くらいの氷塊を顔の前で作っていらっしゃる!?
/353ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4604人が本棚に入れています
本棚に追加