【プロローグ】

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 ゆっくりと歩み寄ってくるのは、おそらくオレと同じくらいの年の少女だった。歩くのに合わせて頭の両サイドでくくった赤い髪が揺れ、つり目な青い瞳は勝気な色を映している。  その美貌にも、冬にもかかわらずなぜかミニ丈の赤い浴衣という格好にも目が行くが、何より目を引くのはその両手に握られた二丁の銃だろう。 「ん、人?」  少女の眼がこちらに向く。ゴリラの動きに気を付けつつ、立ち上がりゆっくり距離を取るオレに少女が尋ねる。 「あんたお金ももらわずに【空白獣(ブランカー)】退治に来たお人好し? それとも彩色片目当てのハンター?」  聞きなれない単語が混ざる。けど、今は気にしてる場合ではないか。 「気づいたらここにいたんだ。こんな化け物となんて戦えるか」 「ふーん。迷子、ね」  少女は疑わしげな目を向けてくるが、 「ま、こいつ倒した後でいいか」  オレから視線を外す。それと時を同じく、しびれを切らしたように青いゴリラもどきが吠える。しかしその声はオレを追っていた時の狩る側のそれではなく、狩られる側の怯えたものに聞こえた。どうなってんだ。 「さっさと終わらせますか」  言うと彼女の雰囲気が変わった。なにがと訊かれても困るが、確実に何かが違う。たぶんゴリラもどきが恐れていたのはこれだ。
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