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「赤の書2章3節【炎柱(フレアピラー)】」
後ろの方から地面を強く踏みつける音がすると同時に、真っ赤な2本の火柱が青ライオンの足元から吹き上がり、絡まりあって敵を飲み込んで天を衝く。
これもあの日と同じ光景だ。でもその先は違った。獣の咆哮が響き渡り、炎の柱が四散する。中から現れた青ライオンはまたもや無傷のままこちらを、というかたぶんオレの背後をにらみつける。
でも、なんかあいつ微妙に色が薄くなってね?
よく見ようと目を凝らしていると、近づいてきていた足音が隣で立ち止まった。
「ふーん。あんまり効いてないか。これなら期待できるかも」
そこにいたのは、冬の日と同じくミニ丈の浴衣から惜しげもなく太ももをさらすあの赤髪の少女だった。
燃えるような髪と同色の浴衣。そのゆったりとした袖口から伸びた両手に握られた双銃を敵に向けたまま、勝気な色を映した双眸がオレを捉える。
「あんたがランク付けのテストの途中でやっかいごとに首突っ込んだバカよね。コイツの相手はあたしがするから、あんたは下がってなさい」
エラそうというよりは、自信の表れなんだろう。まあ今のオレはどこからどう見ても足手まといでしかないわけで、当然っちゃ当然か。
言われた通りに距離を取ろうと後退すると、反対に赤髪は敵に向かって走り始める。
対する青ライオンはオレにも撃ってきていた氷のつぶてを周囲に浮かべ赤髪に向けて撃ち出すのだが、あるいは身のこなしで軽くかわされあるいは2丁の銃から放たれる光弾に撃ち落され赤髪の足を止めるには至らない。
さっきは油断していたのか、それとも今は本気の本気を引っ張り出しているのか。オレのときとは比べ物にならない数の氷の連撃にもかかわらず、涼しげな顔で歩を進める赤髪の姿はまるで舞でも踊っているようで目を奪われる。
断じて大きく動くと中が見えそうな裾から目が離せないわけではない。お、黒かな。
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