【第一章 赤の魔女】

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「シロー、さっき本物の魔法の話をした時に、その使い手はほとんどいないって言ったでしょ」  青ライオンが氷を撃ち出し妨害を試みるも、そのすべてが炎の翼に阻まれる。 「ああ言ってたな。そういやアレ、説明の途中だったっけ」  陣が出来上がっていくのに反比例して、炎の翼はそのサイズを縮めていく。 「そもそも魔導書魔法も得意属性でも全部使えるわけじゃない。そんなことは魔力を自分の手足みたいに自在に使えないといけないし、普通はそこまではできないよ」  炎の羽根が減っていくにつれて防御が手薄になるも、銃撃によってその穴を埋める。 「でも心器の中にはそれを可能にするものもあるんだよ。特定の色に関してはすべての魔導書魔法を使いこなして、そのうえそれ以上のこともやってのける五色それぞれにひとつずつある色の支配者」  炎の翼がほとんどなくなったタイミングを見逃さず青ライオンが飛びかかるも、残った炎のすべてが銃へと集まり、放たれた巨大な熱線が跳ね飛ばす。 「よく見ておいた方がいいよ。色の支配者の一角を使いこなして、学生なのにもうギルドランクはB、実力だけならAランクでも通用するって言われている、間違いなくボクたちの学年では最強の人」  青ライオンが体勢を立て直した時にはもう遅い。魔法陣はいっそう輝きを増し、赤髪が高らかに詠う。 「【九頭竜炎(カーディナル・バイス)】!!」  赤髪を中心にここのつの火柱が上がる。煌々と燃えたぎるそれはただの吹き上がる炎ではなく、鎌首をもたげ倒すべき敵に声なき咆哮をぶつけていく。 「あれが本物の魔法を使える人間のひとり。『赤の魔女』、シエナ・バーストンさんだよ」  一瞬だった。炎のオロチの襲撃を前に青ライオンはなすすべもなくその身を削られていき、断末魔の叫びすらも欠片も残さず食い尽くされ焼き払われた。  あれ生身で受けたら消し炭も残んねえだろ。さすがは上級魔法。
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