【第二章 銀嶺館】

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 ギルドを出ると空は茜色に染まっていた。こっちの世界も夕日は変わんねえな。  商店街をぶらぶらと歩きながら、オレの異世界ライフ初日を思い返す。いやまあ昨日にはこっちに来てたけど、ほとんど外に出てねえしな。ノーカンにしとこう。  ギルドは想像してた通りだったな。酔っぱらってたおっさん達も気のいい人たちみたいだった。帰り際にも困ったことがあったら相談しろって言ってくれたし。  聞くだけなら簡単だって笑いながら酒飲んでたけどな。というかあの人ら、まさか朝からずっと飲んでたわけはないよな。まあなんにせよ気のいい人らっぽかったのは違いない。  人生初のクエストは、失敗におわっちなったなぁ。ギルドランク最低からのスタートってのも面白そうだとは思うけど、異世界での学校生活ってだけで楽しさ半分心配半分なのに、さらに苦労が増えた感じだ。  オレのギルドランクがFになったのは薬草を取ってこなかったことよりも緊急時の無謀さがマイナス要因になったみたいだった。  あのときさっさと帰っていればと、正直言って後悔している。でも後悔はしても反省はしない。大きなケガはしなかったし、人の命を助けられたのも事実なわけだし。 結果オーライなだけかもしれないが、終わりよければ全てよしとも言う。今回のことはこれで良かったんだろう。  ギルドランクも3か月後には上がるチャンスがあるわけだし。学校でしばらく困るかもしれないが、それは入学後のオレが考えることで今のオレには関係ないしな。  なんて無理やり気分を切り替えていると、 「あっ! 王様だ!!」  小さな人影が駆け寄ってきた。その呼び方にも声にも姿にも、すべて覚えがある。というかこっちでの知り合いは数えるほどしかいないか。 「お父さんを助けてくれてありがとう!」  森で出会った少女はなんとも元気に笑っていた。無事とは聞いていたけど、実際目にするとやっぱり安心する。その後ろには『空白獣(ブランカー)』に襲われていたガタイのいいおっさんもいる。 「おお、こんなところで会えるとはな。今日は本当にありがとう」
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