【第二章 銀嶺館】

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「どういたしまして。お元気そうで安心しました」  まあオレは逃げ回ってただけで、助けを呼んだのも敵を倒したのも別のやつなんですけどね。とは思っても言わない。  感謝を述べる親子はふたりともうれしそうで、特に女の子の方は言動の端々からそれが伝わってくる。  これだけ喜んでくれるなら、頑張ったかいがあるってもんだ。  Fランクになった後悔はもちろんある。でも、やっぱりあの時走ったことに関しては反省する必要はないよな。 「コレ、ギルドの方に届けようと思ってたんだが、ここで会えたならちょうどいい。今日の礼だ、もらってくれ」  そう言って差し出された袋を受け取ると、ズシリとした重みが伝わってくる。 「ありがたく頂戴しますけど、これは?」 「お肉だよッ!」 「ウチはこの商店街で肉屋をやっていてな。できるだけいい肉を見繕って来たんだ」  へぇ、肉か。牛か豚かはたまた鳥か。そもそも牛とか豚がこの世界にもいるのかは知らんけど、なんにせよ肉なら何でも好きだからありがたい。  まあオレ魚でも野菜でも大体は好きなんだけどな。あ、粘っこい奴は苦手だわ。 「今日は本当にありがとう。これからも良いもの安くおすすめさせてもらうから、店の方にも顔だしてくれよ」 「王様バイバーイ!!」  親子が去るのを見送って、袋の重みを再度確かめる。  ヤバい、ちょっとニヤけるぞこれ。クエスト自体は失敗したけど、結果的にこれがもらえた。あっちでバイトとかもしてなかったし、気分的には初報酬だ。  しかも肉。飯が豪華になるのは素直にうれしい。
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