【第二章 銀嶺館】

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 うかれながらしばらく歩くと、あからさまに周りの町並みから浮いたボロボロの洋館が見えてくる。  それこそがこの世界でのオレの帰る場所。その名を銀嶺館。  名前だけは立派だけど、ツタで覆われたその姿は幽霊でも出てきそうだ。というか実際近所の子供らに幽霊アパート呼ばわりされてるらしいし。  でもオレ的にはこのボロさが気に入った。ボロアパートでの貧乏学生暮らしは昔から憧れてたんだよな。  管理人が自分探しの旅に出てるってのはさすがに驚いたけど。まあイロさんが管理人代行ポジションらしいから問題はないだろう。  イロさんから預かった合鍵を取出し鍵を開け……あれ? 「鍵開いてるぞ」  いやいやオレはちゃんと閉めたぞ。いくらオレでも初日から忘れたりはしねえよ。 「ああ、他の人が帰ってきてるのか」  昨日は仕事で出かけてたとかでオレはまだ会ってないけど、イロさんいわく他にも住人はいるらしいし。  どっちにしろいくらボロイとはいえ住人三人は少なすぎるだろ。洋館の中はけっこう広くて部屋も余ってるみたいだったし。  ドアを開けると右手側に衝立が立っていてその向こうは談話スペースになっている。  さらにその向こうにはキッチン。トイレ・風呂とともに共用だから料理はここで作って談話スペースの机でとることが多いらしい。  昨日キッチンを使わせてもらったけど、使い勝手は元の世界と変わらなかった。魔法関連の何かがあるんだろうな。原理は知らんけど便利だからいいや。
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