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「なら、今回のことは水に流すってことでもういいよな。そんじゃあ、自己紹介といこう」
立ち上がって右手を差し出す。
「オレは黒上史郎。この春からリリアネス魔法学園に通うことになって、昨日からこの銀嶺館で暮らしてる。知らないことも多いから、以後よろしく頼む」
差し出した手にシエナも右手を恐る恐るといった感じで伸ばすけど、途中で引っ込めてまた膝の上で握り拳を作ってしまう。
「あたしはシエナ・バーストン。あたしも今年からリリアネス魔法学園に通うから、同い年ね。困ったことがあったら遠慮なく聞いてくれていいわ。あんたが心器に目覚めたって学園に報告したのもあたしだしね」
「おお、オレの顔覚えててくれたのか。あん時は助けてくれてありがとな。あ、助けてもらったのは今日もか」
「どっちもついでだから気にしなくていいわ」
「そっか。でも感謝はしとく」
こいつが報告してくれたおかげで魔法の世界なんて面白そうなとこに来られたことも合わせると感謝してもし足りないくらいだし。
「そう。なら感謝されついでにまずひとつ助言してあげるわ」
お、なんだ? こっちでやっていく心得的なもんか。
「女物の下着を集めるのはやめておいた方がいいわよ」
「………………へ?」
「盗んでないなら他人の趣味にとやかく言うのはどうかとはあたしも思うわ。でも、同じアパートで暮らしていく以上変態を見過ごすわけには……」
「いや。いやいや、なんでそんなことになってんだよ!」
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