【第二章 銀嶺館】

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「バーストンさん?」 「ん? ああ、オレが入ったボロアパートにシエナもいてな。いろいろ教えてもらった」  大人の本関連はクリスには黙っておこう。 「バーストンさんが暮らしてるのってたしかイロさんと同じ銀嶺館だったよね。それでシローはイロさんと知り合いだったのか」 「そういうことだな」 「なんで学園の寮の方に入らなかったのかは訊いてもいい?」 「たいした理由はねえよ。学校からギルドのクエスト受けた時に寮生は寮費分学校に入れる金額が上がるだろ。異世界から来た貧乏学生としては先立つものが大事なわけだ。あとボロアパートでの貧乏学生生活に憧れてた部分もあるし」  それが昔から読んでた児童書・ラノベの影響とはもちろん言わない。  一軒家での両親不在も同じくらい憧れはあるけど、掃除が面倒臭そうだしなアレ。 「やっぱりシローは面白いね。学園の寮は広いし設備もいいから他の世界から来た人たちもだいたいそっちを選ぶのに。そもそも学費も寮費もクエストの報酬の一部を入れる前提で元は安くなってるから、合計で見るとそんなに高くないしね」  でも、と笑ってクリスは続ける。 「小さい部屋で色々やりくりしながらっていうのも楽しそうだね。寮の方は設備が揃いすぎてて部屋から出て他の人とかかわることも少ないし」 「クリスは寮暮らしなのか」 「うん。中等部のころから寮で暮らしてるよ。緑の書の使い手は自宅から飛んで通う人もいるんだけど、ボクは実家が少し遠かったからね」  空を飛んだり遠くの人に声を届けたりと、風と音を司る緑の書は普段の生活で便利だよな。
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