【第二章 銀嶺館】

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「おい、坊主」  近くのテーブルで飲んでいたハゲのおっちゃんが声をかけてくる。  タンクトップ一枚といういでたちに全身を覆う筋肉の鎧、やらないかとでも続きそうな気がしたのは間違いなくオレの偏見。 「アリシアちゃん戻ってきてるぞ」  目を向けるとたしかに受付にアリシアさんの姿がある。話し込んでて気づかなかった。  わざわざ教えてくれるなんて良い人だな。  スキンヘッドのナイスガイに礼を言い受付の方に向かう。  去り際にもう一度クリスに昨日の礼を言い、何かおごろうかと申し出ると、 「気にしなくていいよ。でもどうしてもお礼がしたいって言うなら、ちゃんと強くなっていつかボクのクエストを手伝ってね」  だとさ。  よし、当面がんばるための目標はできたな。 「アリシアさん、おはようございます。」 「はい、おはようございますシロウさん」  あいさつをすますと、さっそく地下の訓練場に案内してくれる。  先行するアリシアさんの背中を追いかけていくと、たどり着いたのは第一訓練室と書かれたプレートが出迎えてくれる扉の前だった。  昨日イロさんに連れて行かれた第三訓練室に比べると、そもそも扉からしてデカイ。 「俺一人のためにこんな広い所を借りてもらってよかったんですか?」  なんかイヤな予感がするんですけど。 「ちょうどこの時間は空いていましたし、ここなら多少暴れても問題ありませんしねぇ」 「えっ、暴れるんですか?」  訊いてもニコニコ笑うだけのアリシアさん。イヤな予感はとどまるところを知らない。
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