【第二章 銀嶺館】

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 チラリズムの魔の手にからめとられたのが運の尽き。そこからは一方的だった。  剣が舞い、弾丸が飛び交い、鎖が襲い掛かる。魔力で編まれたそれらの乱舞が手の届かない遠距離から休む暇なく降り注いでくる。  ちくしょう。文字通り手も足もでない。魔力の流れを感じるという主旨からいえばこれでいいんだろうけど、受けてるだけじゃ限界も近い。  リズムを崩すために、何か手はないのか。  考えながら、体をそらしたオレの真横を魔力の弾丸が通り過ぎていく。 「そうか!!」 「なにか掴めましたかぁ?」 「いえ、そういうわけではないですけどね」  言いながらも剣やら鎖やらの雨はやまない。  でも、そうだ。オレの属性を調べるために試した各属性の基礎中の基礎の属性魔法。シエナが使ってた【赤の魔弾(レッドバレット)】などが属する魔弾系の魔法。  オレは属性がないからひとつも成功しなかったけど、逆に言えば属性の関係ない無の書の魔弾なら!  弾丸をかわし、鎖をはじき、投げつけられた刀を握りつぶして前へ出る。 「無の書3番【魔弾(バレット)】!!」  体内の魔力がきちんと流れ、魔法が形成されていくのがなんとなく伝わってくる。  よし、いける!  色無き魔力が膨張し爆音が響いて空気を揺らす。……なぜかオレの手元で。 「ふぎゃぁぁぁあああ!」  魔力の弾丸はなぜか撃ち出されることはなく、ゼロ距離からオレを襲った。  完全な不意打ちとなった一撃に耐えられるはずもなく、簡単に打ち上げられたオレは受け身も取れず叩き付けられて転がることになったのだった。  なんかオレこっちに来てからこんなんばっかだなぁ。あ、元からか。
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