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「なんでわざわざそんな危ない事するのよ。要は魔力に慣れればいいだけでしょ」
「慣れるって、そのために魔法を使って爆発するしかないんだろ」
「だからなんで使えもしないやつで訓練しようとするのよ。まず使えるやつで慣らせばいいでしょ。とりあえず心器を出してみなさい」
あ、そういうことか。
言われるままに頭の上に心器を出現させる。位置的にオレからは見えないけど、等間隔に五つの透明な宝石の並んだ小さな王冠が鎮座していることだろう。
んでもってそのまま、
「無の書1番【魔力障壁(ウォード)】」
「そう、それでいいのよ」
言われずとも無の書の魔法を唱えたオレにシエナは満足そうにうなずき、
「普通は心器に目覚めてここへ来た人間は基礎級くらいは最初から何とかなるもんだけど、あんたは例外みたいだからね。基礎からきっちりするしかないわよ。とりあえず魔力が切れるまではそのまま維持しときなさい」
「そのままって、王冠乗せたままか」
「当たり前でしょ。あんた心器がないと魔力障壁も使えないんだし。目立つのが嫌ならここの隅でおとなしくしてなさい。最初は動き回る必要もないからどれくらい持つのかだけ測っておけば十分よ」
酔っぱらったオッチャンたちにからかわれそうな気もするけど、それくらいはまあいいか。座ってるだけなら楽だし。
でも、何もしないならしないで暇だよな。
「退屈なら、ボクが話し相手になるよ」
「マジか、ありがたい。でもいいのか? クリスも入学前で忙しいんじゃねえの」
「今日はもともとシローに住んでた世界の話を聞こうと思ってたから、時間があるならお願いしてもいいかな?」
「いいよ、いいよ。それくらいならお安い御用だ」
オレのその返事にクリスはうれしそうに目を輝かせる。
オレがこの世界で見るものが珍しかったのと同じで、こっちの人からしたら元の世界の話は貴重だってことなのかね。
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