【第二章 銀嶺館】

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「やべぇ、さすがに遅くなりすぎた。」  あのあと、クリスから元の世界のことをいろいろ聞かれたり、逆に魔法学園のことを教えてもらったりしてたんだ  シエナと同じクラスだったこともあるらしく、その時世話になったりもしたんだと。  なんだかんだで色々アドバイスくれたりしてるし、ああ見えて世話好きなのかね。  そうやって話し込んでいるうちに気が付けば空が赤く色づき始めていた。  クリスにシエナのフォローを頼まれた手前、飯の用意くらいはしておこうと思ってたのに。  それくらいしかオレにできることはなさそうだしな。  帰りに寄り道して、昨日彩色空間で会った親子のやってる肉屋に寄っていく。 「あ、王様! いらっしゃい!」 「お、さっそく来てくれたか。安くしとくよ」 「どうも。それとチビッ子、オレの名前は黒上史郎な」  やっぱり王様なんて呼ばれるのは気恥ずかしいし。 「んー? りょーかいしました王様!」  おい、ぜんぜん了解してねえだろ。ま、いいか。 「昨日は肉をありがとうございました。今朝いただきましたけど、すげえうまかったです。それで今日は晩飯用のを買いに来ました」 「そりゃあよかった。ちゃんと礼になったなら安心だ。だが若いとはいえ、朝晩とも肉で大丈夫か?」 「うーん。平気だと思いますけど」  ここの肉以外にうまいって確信持てるものはまだないしなぁ。 「こういうのもあるけど、どうだ?」  おっさんが差し出してきたのは、茶色いサクサクの衣にこうばしい香り。まごう事なきコロッケだった。  おお、こっちにもあるのか! 「いただきます!」  包んでもらったコロッケを抱える。さて、冷めないうちに急いで帰るか。あ、でもシエナが帰ってくるまでに冷めちまうかも。  まあ、そのときは温め直すしかないか。 「まいどあり、またよろしくな」 「じゃあねー王様!」
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