【第二章 銀嶺館】

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 で、日が完全にくれだしたあたりでようやく銀嶺館に帰り着いたわけなんだけど、 「おお、やっと帰ってきたか少年」 「遅いわよ変態。あんたの分も用意してあるんだから、早く手を洗ってきなさいよ」  なんかもう準備万端だった。  玄関入ってすぐ右、ついたてに遮られた向こうの談話スペースのテーブルの上には、所狭しと料理が並べられていた。  薄く切った牛肉を軽くあぶってレタスっぽい野菜と混ぜたサラダに、大きめのコップを満たすオニオンスープ。テーブルの中央にはでっかいオムライスが鎮座している。  ぱっと見で分かるのはそれくらいで、材料からして見たことなさそうなものも多い。 「少年、その抱えているのは何だ?」 「コロッケですよ。晩飯にしようと思って、ふたりの分も買ってきたんですけど」 「そうか。もう一品追加だな」  オレから包みを受け取ってイロさんはキッチンに向かうんだけど、すでに机を埋め尽くす分だけでも食いきれるのか、コレ? 「なにぼさっとしてるのよ。あんたがいないと始まらないんだから、早く席に着きなさい」 「そもそもなんなんだよ、この大量の料理の山は」 「きみの歓迎会だよ。材料を買ってきたのがワタシで、料理したのはシエナだ」  コロッケが山盛りになった皿を片手にイロさんが戻ってくる。 「え、シエナって料理できたのか!?」 「なによ、これくらいはできるわよ!」  いや、これはできるなんてレベルじゃねえよ。朝の様子から、てっきりただのハラペコキャラかと思ってたわ。 「また失礼なこと考えてるでしょ」 「イエソンナコトナイデスヨ」  勘よすぎだろう。いや、妹もよく女の勘の一言で色々当ててたしそういうもんなのかね。
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