【第二章 銀嶺館】

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 そうして戻ってきた俺が残っていた椅子に腰かけて、晩飯の開始となったんだけど、 「なんだこれ、うまッ!!」  料理は全部すげえ旨くて、声を上げずにはいられなかった。  それに気をよくしたのか、シエナはふんぞり返る。 「このあたしが作ったんだから当たりま……って、あんたなんでまだ心器出してるの!?」 「え? 気付いてなかったのか」  てっきりスルーされてるとばかり思ってたわ。 「久しぶりに全力で作った料理の感想が楽しみで気を取られていたんだろう」 「そ、そんなんじゃないですよ! それより変態、なんでなのよ!」 「いや、なんでって魔力障壁がまだ切れてないから消すわけにもいかんだろ」  そう昼飯からこっち、ずっと王冠をのせっぱなしなのだ。帰り道とか人目が気になったぞまったく。 「どれだけ魔力量あるのよ」 「もしくはよほど魔力の運用効率がいいかだが、それはないか。まあどちらにしても、魔力障壁を長時間維持できるのは何かと便利だ」 「いやでも、魔力障壁って発動しっぱなしにする人もいるんじゃないでしたっけ?」  学園のパンフレットにそんな感じのことが書いてあった気がするんだけど。 「そういう人もいるけど、それは最低でも中級魔法をふたつは使えるレベルの人が魔力の運用効率を限界まで上げてやってることよ。あんたは中級どころか、基礎級の魔法もまともに使えないじゃない」  そういうもんか。いやでも、オレの運用効率とやらがいいわけではないのなら、 「オレ、魔力の量は多いってことか!」  ちょっと、いやかなり嬉しい。心器にしても魔法にしてもいいとこひとつもなかったからなぁ。 「ま、宝の持ち腐れにならない様に頑張りなさいよ」 「おう、もちろんだ」
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