【第三章 異世界生活】

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 偉大なる先人たちはありがたいお言葉を残してくれている。いわく、人生働いたら負けである、と。  この真実に気づいた先達にはまったくもって感服せざるを得ない。  人はなぜ働くのかと問われれば、生きていくための糧を得るためである。つまりあくまで目的は自らの生活であり、労働は手段にすぎないのだ。  そして一般的に手段とは目的を達成するために簡潔であればある程、かかる労力が少なければ少ない程好まれる。  オレの世界では掃除も洗濯も機械の力を借りて人の負担を減らしているし、この世界でも魔法の力を借りて日々の苦労を減らしている。  つまり究極的には何の労もなく生きていくことこそが人の理想であると言えよう。  そして労働とはその理想から最も遠い行為である。  だからオレは先人に習い声を大にして叫ぼう。  労働とは理想に対する敗北である! 「なに言ってんのよ、変態」 「いやだから人の生きる意味と理想と現実の……」 「あんたのスッカスカで中身のない話の内容はどうでもいいわよ!」  ひどッ。まあ、オレもよく分からず適当言ってるだけだけれども。 「そうじゃなくて、なんでギルドのど真ん中でいきなりそんなバカなことをとうとうと語りだしてるのかって言ってるの!」  ギルドの酒場の一角にて、今日も今日とて騒がしいオレたちだった。
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