【第三章 異世界生活】

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「ギルドの中だからこそだろ」  現代日本的に言えばギルドってハローワークだし、労働の意味を問うにはこれ以上の場所はないだろう。……ちょっと違うか。 「というか、働いたら負けならあんたも思いっきり負けてるじゃない。お昼を食べたら今日も商店街の方に行くんでしょ」  朝はアリシアさんにボコられ、昼からは商店街の方でお手伝い。これがオレの日課になりつつあった。  Fランクってほぼ普通のバイトみたいな依頼しかないし。 「だから現状の自分は負け組だってことを再認識してるんだよ」  いつの日か、輝かしい隠居生活を送ることを夢見て。引きこもっても自分の金ならニートじゃないよね。 「はぁ、もう変態はほっといてお昼にしましょうか」 「おい、そろそろ変態はやめてくれよ。せめてバカくらいに……」 「文句ある?」 「いえ、ありません!」  銃口を突きつけられ、オレは素早く敬礼をとる。こちらに来て早一週間、このやり取りにも慣れてきて反応が早くなってきたなぁ。 「シエナさん、そのくらいにしておこうよ」  言ってクリスの視線がまわりへ流れ、それにつられて目を向ける。  あー、すげえ見られてるな。まあ、あれだけ騒いでりゃ当然か。  気付いたシエナはその頬を髪と同色に染めて縮こまる。けどお小言は終わらないらしく、 「あんたが変態じゃないならなんだってのよ」  小声で文句を言ってくる。  男女が同じ屋根の下で一週間も暮らしてたら、そりゃあ色々あるよね。ラッキースケ……いや、あれはあくまで不幸な事故だ。  何がとは言わないが、本人の申告通りシエナは青と白のストライプだったことを確認できたのが成果と言っておこう。
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