【第三章 異世界生活】

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 まったく、とため息とともにシエナは文句を打ち切り、テーブルの上にバスケットを広げていく。  中から顔をのぞかせたのは色取り取りのサンドイッチたち。ちなみに色取り取りなのは具材だけでなく、それを挟むパンそのものもだ。  こっちでは割と見るものらしい。オレも最初は驚いたけど、うまいから慣れた。 「やっぱりシエナさんの料理はおいしいね」  タマゴサンドをパクつきながらクリスが笑う。この一週間で、というかオレがシエナに料理を教えてもらう約束をした次の日には、シエナとクリスもお互い名前で呼び合うようになっていた。  シエナの方が、ややこしくなるからとか何とか言っていたんだ。 「あたりまえよ」  ぶっきらぼうに返すシエナだけど、口元がかすかに緩んでる。  ホント料理が好きだよな。……作るほうだけでなく、食う方も。  オレとクリスがひとつ食う間に、シエナが三つは平らげちまっている。 「そんなにあわてて食うと太るぞ」  まあ、シエナの場合は一部脂肪を蓄えた方がよさそうな部分もあるけど。 「ふぉふぇふ?」 「ごめんなさい、燃やされたくはないです!」  だから手のひらをこっちに向けないでください。  もはや、は行のみでも言ってることがだいたい分かるようになった。というか、似たようなやり取りを繰り返してるし、ある程度パターンも覚えた。  燃える、の一言で済ますときは要注意。対応を誤れば、即座に魔法が飛んでくる。
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