【第三章 異世界生活】

5/62
前へ
/353ページ
次へ
「シエナさん、行儀悪いよ」 「むぐッ」  ナイスだ、クリス!  指摘されたシエナはおとなしく手をおろし、サンドイッチを詰め込んでいっぱいになった頬をモゴモゴと動かすだけになる。  予想外の方向から注意を受けて、頭の両サイドでくくられた燃えるような赤髪も心なしか萎れているような気がするし。  さすがクリス。さらっとフォローしてくれるあたりにヒロイン力の高さがうかがえる。 「シローへのお仕置きはちゃんと口の中のものを飲み込んでからね」 「油断したところを背後から!?」  いつの間にそんなに非道な手段をとる奴になっちまったんだ。  驚いているオレにクリスはにっこりとかわいらしい笑みを向け、 「シローは視線が露骨すぎるよね」 「まったくよ」  え、マジで? こう、ちらっとしか見てないと思うんだけど。 「だから、そのかわいそうなものを見る目をやめなさいって言ってるの!」 「分かった! 分かったから銃はしまってくれ!」  大きめに開いた浴衣の袖口から流れるように取り出して構えるシエナ。威力的には魔法に劣るけど、見た目的にはこっちの方が怖いんだよ。 「ちゃんと反省した?」 「残念ながら、オレは後悔はしても反省はしない主義……」 「反省のほうをちゃんとしなさいよ!」 「ふぎゃッ!!」  威力は抑えられてたけど、顔面に直撃したせいで椅子ごと後ろにひっくり返る。まあ、慣れたもんですぐに椅子を起こしてサンドイッチに手を伸ばすんだけどな。
/353ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4604人が本棚に入れています
本棚に追加