【第三章 異世界生活】

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「こんちはー、王様!」  商店街の肉屋の前にたどり着くと、かけられたのは元気いっぱいの声。さらにそれに渋い声が続く。 「おう、クロウ遅かったな」  この一週間で肉屋の親子ともすっかり顔なじみになっていた。のはいいんだけどさ。 「だから、オレの名前はクロウじゃなくて史郎ですって」 「おう、そうかそうか。悪い、覚えとく」  それを聞くのも何度目ですかねぇ。まあ、これに関しちゃ完全にオレの落ち度だけど。  クリスに名乗った時の件でシロウ・クロウエとでも言っといた方がいいって思ってたのに、普通に黒上史郎って名乗って聞き間違えて覚えられちまったんだよな。  いやでも、何度も間違いを指摘してんだしそろそろちゃんと覚えてもらいたいところだ。 「で、クロウ。その後ろの嬢ちゃんは誰だ?」  言ったそばから覚えてねえじゃねえか。てか、後ろ?  振り返ると物陰からこちらをうかがう人影が。薄暗い建物の隙間から除く姿が似合いすぎてこえーよ。
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