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各階は右と左で男女部屋が分かれていて、基本二人部屋だ。部屋には簡易キッチンが設置されている。ジルは同級生の男子と同室だが、ナターシャは両性体ということで、男子側の部屋を一人で使用している。
ジルの部屋は五階で、ナターシャの部屋は八階にある。エレベーターに乗り込むと、ゆっくりと上に向かって動き出した。
「明日は朝早いんだから早めに準備して早く寝なよ」
五階に着くとジルはエレベーターを降りていく。その背に片手をひらひら振って自室に戻っていく。
自室に入ったナターシャは、肩に掛けていたカバンを無造作にベッドに放り投げるとクローゼットの中を漁る。少し古ぼけた肩掛けのバックとコンパクトケース。その中には何種類かのハーブなどが入っている。中身を確認するとバックに入れ、服や下着も数着無造作に突っ込む。
「こんなもんでいいか。……プリギも一応入れとくか」
棚から取り出した薬草をケースに入れると、部屋に備え付けのパソコンの電源を立ち上げる。
何件か来ていたメールにざっと目を通して、画面に文字を入力していく。相手はラザエルだ。
何度も授業をサボっていたツケが今回ってきているのだ。
千文字以上の反省文に、五千文字以上の論文の提出だ。
ラザエルにメールを送ると大きく伸びをして、椅子に凭れ掛かる。
「……明日か」
重々しく呟く。
「シルドゥ ア コネル ドゥ アル マハン」
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