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ソファに座っていた男女はジルの両親で、久しぶりに会う息子に笑みを浮かべた。
「お茶でも入れてくるわね!」
ライラは小走りでキッチンに入っていく。ナターシャたちはそれぞれ適当にソファに座った。
「それで、学校はどうだい?」
「ユーリったらナターシャが帰ってくるって知って落ち着きがなかったんだよ? まあ、全然連絡してこないから心配なのも無理はないけどね」
いたずらっ子のように笑いながらアスティア――ジルの母親――は言った。その隣ではウィル――ジルの父親――は頷いている。
「ナターシャの様子は書かれていないかとジルから手紙が来るたびに私たちに聞いていたからね。ライラの方が寂しそうに見えて実はユーリの方がナターシャに会えないことが寂しかったようだよ」
「余計なことを言わなくてもいいよ、二人とも」
ユーリ――ナターシャの父――はじろりと二人を睨む。
ジルの両親は顔を見合わせて笑った。
「それよりきみか。火竜族で元両性体というのは」
「はい。クルト・ビットナーと言います。学園から連絡はあったかと思いますが、元両性体で火竜族……もとは同種族ではありましたが。それゆえに今回こちらに――」
「うん、聞いているよ。だけど私は父以外で初めて火竜族を見たよ。きみも素敵な男性だね!」
アスティアはクルトを見つめて笑った。
「やはりあなたは――」
「アスティアの父は火竜族だ。彼女も半分その血を引いている。父親似だからほとんど火竜族と見た目は変わらないが」
「少しきみより肌の色が薄いぐらいかな」
ジルの両親とクルトの会話をナターシャ、ジルそしてユーリは黙って聞いていた。
というよりも口を挟める気がしない。
アスティアは父親と同じ火竜族に会えたのが嬉しいのか少し興奮気味にクルトに話し掛けている。そんな彼女を見つめながらウィルも目元を綻ばせながら相槌を打ちながら話に入っている。
「ジルはおばさんのお父さん、おじいさんに会ったことあるんだっけ?」
目の前で会話に花を咲かせている三人を見ながらナターシャはジルに話し掛けた。
「ないよ。俺が生まれる前に病気で亡くなったって聞いてる」
「きみのおじいさんはとても素敵な人だったよ。男のぼくから見ても惚れてしまう程にね」
ユーリは昔を懐かしむように笑う。
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