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「火竜族なのにおばあさんと結婚するぐらいだし、素敵な人だったんだろうなとは思うけどね」 「当時にしてみればありえないことだったからね。火竜族はその……ぼくたち竜族を憎んでいたからね」  ユーリの言葉にどこかどんよりとした空気が流れたが、それを打ち破るようにライラの明るい声が響く。  「お茶が入ったわ! あら、どうしたの? あなたたち顔が面白いことになっているわよ」  笑うライラにクルト、ウィル、アスティアがナターシャ達を見た。 「そんな面白い顔をしていないよ、ライラ」 「そう? あなたったら眉間にしわを寄せて生まれたての赤ちゃんみたいな顔してるんだもの」  ユーリの眉間をツンツンしながらライラは笑った。  ライラの例えにユーリは何とも言えない顔をしながら、お茶を置くライラの手伝いをする。 「それよりいよいよ明日だね、準成人式。もう準備は終わったのか?」  ウィルの言葉にナターシャは嫌そうな顔をした。その反対にライラは子どものように目を輝かせている。 「ええ! ナターシャの晴れ舞台だもの! とびっきり素敵な衣装を用意したわ! 誰よりも素敵な女の子になるわ!」 「母さん! ぼくは男だ!」  ナターシャは怒ったようにライラを見た。すでに母親の中で自分は女なのだと思うと腹立たしくて仕方ないようだった。 「あら、でもあなたはとってもかわいいもの。きっと似合うわ!」  にっこり笑うライラにナターシャは脱力したようにため息を吐いて立ち上がった。 「ナターシャ?」 「少し外に出てくる」 「なら俺も一緒に行くよ。一人だと迷子になるかも。久しぶりに帰ってきたんだし」 「一人でも大丈夫だよ。 ジルは来なくていい」  ナターシャは後ろからする声に振り向きもせず家を出た。  里の中心にはシンボルともいえる噴水がある。  光を反射して七色に光る水は幻想的で、人と竜を(かたど)った像がその中心で輝いている。  今は準成人式の為にたくさんの花や色とりどりのレースが飾られていて、いつも以上に輝いている。  噴水の周りで幼い子供たちが花冠を頭の上に乗せて、楽しそうに駆けている。その手には蝶を模した飾りが握られており、飾りつけをしている大人たちに渡している。  小さい頃自分たちもあんなことをしていたな、とナターシャは笑みを零した。  ――ジルとぼくと、そして……。
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