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「ご、ごめん。向こうの生活に慣れるのに必死だったんだ。別にアレイラのこと忘れてたわけじゃないよ? 時間あれば連絡しようと思ってたし、一日だってアレイラのこと忘れたことなんて――」  その様子を見ていた少女(アレイラ)は、ナターシャの慌てようが面白いのかむくれ顔を引っ込めて笑った。 「ふふっ、ナターシャったら! 別にそんなに怒ってないよ。まさかこんなに慌てるなんて!」 「アレイラ、ぼくのことからかったね」 「ごめんなさい。でも、心配していたのは本当よ? 寂しかったし」 「悪いんだが、俺のことを忘れないでもらえるとありがたい」  クルトは一つ咳払いをした。その時にクルトの存在を思い出したかのようにナターシャはクルトを見た。アレイラは数回瞬きをして微笑んだ。 「ごめんなさい。ナターシャのお友だち?」 「違う。こいつはクルト・ビットナー。見ての通り火竜族だよ。元両性体の」 「じゃああなたが火竜族から来たお客様ね! 私はアレイラ。アレイラ・ゾーリ。ナターシャとは幼馴染よ」 「よろしく、アレイラ」  クルトの差し出す手をにっこり笑って握り返そうとしたアレイラの手を、ナターシャが阻むように握った。 「こいつとよろしくする必要はないよ」 「ナターシャったら焼きもち?」 「違うよ」 「ナターシャが一番大好きよ!」 「……アレイラ」 「私そろそろ行かないと。明日の準成人式楽しみね!」  嵐のように去っていくアレイラの後姿を見てナターシャはため息を吐いた。 アレイラと話すために止まっていた足を家に向けた。 「彼女が相手だと、いつもと違うな」 「そんなことはないと思うけど」 「少しの間見ていたが、あんな姿は初めて見た」  笑いを押し殺してクルトは言う。  ナターシャは舌打ちをしてクルトを見上げた。 「言いたいことがあるなら言えよ」 「――惚れた弱み、というところか?」  ナターシャは一瞬目を見開き、クルトに向けていた顔を正面に戻した。 「大好きだよ。アレイラはぼくの一等星だから。いつだってぼくの前を照らしてくれていたからね」  ぽつりぽつりと(つむ)がれる言葉の端々に、どれだけアレイラが大事か(にじ)み出ていた。  彼女(アレイラ)のことを話すナターシャの顔は、いつもより優しげだ。 「だから男になりたいのか」 「アレイラを守るのはぼくだ」  ナターシャは強くそう言う。
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