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クルトは「どうかな」とポツリと言葉を漏らし、そしてそれが耳に届いているはずなのにナターシャは無言だ。
「まあ彼女は可愛らしいからな。守りたくなるのも頷けるな」
気付けば玄関前だ。ナターシャはドアに手を掛け、後ろに振り返り、一言言った。
「ばーか」
初めて見た時の生意気そうな表情を浮かべて、そう言ったナターシャは舌を出して家の中に入っていった。
「なんだかな」
そう漏らしてナターシャに続けてクルトも家の中に入った。
朝から里中は子どもや大人たちの声で賑わっていた。今年の準成人式はナターシャを含め、三人いる。少女と少年が一人ずつ。そして、ナターシャだ。
準成人式の主役の家には朝からたくさんの訪問客がいた。ナターシャの家も例にもれず、たくさんの人が入れ代わり立ち代わり訪れていた。
両親は朝から対応に追われていて、隣人も手伝う為に駆り出された。
ナターシャは声を掛けていく人たちの相手に疲れ、途中から全く相手をしなくなった。それをジルに咎められたが無視し続け、昼頃まで自室から全く出てこなかった。
昼頃にはやっと家の中も静かになり、ナターシャがリビングに行くと両親と隣人がソファに座って寛いでいた。ナターシャの姿を見たライラは満面の笑みを浮かべた。
「さあナターシャ! 今度はあなたの支度よ! アスティア、手伝って!」
ナターシャの手を取ってライラは家の奥に向かう。一室の前に来たライラはドアを開けて、ナターシャに入るように言った。
部屋の中には一枚の服が飾ってあった。
花嫁衣裳のように真っ白な服に、七分丈の袖とひざ下から5㎝長い裾にはシーリアという紫の花の刺繍がされている。 横にはスリットが入っている。
「下はないの?」
「あら、下も欲しいの?」
「母さん」
ナターシャが咎めるように言うと、アスティアが笑いながら部屋に入ってきた。
「ライラ、出してあげたら?」
「分かったわよ」
少し拗ねたように言って、ライラは隣に置かれていた箱から真っ白なズボンを取り出した。
「はい、着替えて」
その場で上下の服を脱ぎ、タンクトップとパンツ姿になったナターシャは、服を着た。
「やっぱり似合うわ! さっ、髪もやりましょ!」
ナターシャは鏡台の前の椅子に座って、髪をライラとアスティアの好きにさせている。
「ほら、できたわ!」
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