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 大きく編んだ二本の裏編みをバックでまとめ、左側に三つ並んだ花柄のコサージュが付いている。 「とっても綺麗よ、ナターシャ。今日の準成人式に参加する誰よりも。さっ、早くジルたちに見せてあげましょっ」 「母さん、そんなに腕引っ張らないで」  ナターシャの声など聞こえないかのように、ライラはリビングにいる男たちの名前を呼びながら部屋を出ていく。 ライラに腕を掴まれているナターシャは、半ば引きずられるようにその後ろをついて行く。  そんな親子の様子をアスティアがくすくす笑いながら見ている。 「さあ、みんな! お待ちかねのナターシャよ! とっても可愛いのよ!」  勢いよくリビングのドアを開けたライラは、全員の前にナターシャを押し出した。 「私とライラが腕によりをかけて仕上げたんだ。どう?」 「……とても綺麗ですね。一瞬見惚れてしまいました」  一番最初に口を開いたのは、クルトだった。その隣で壊れかけていたドアを心配していたユーリは、あんぐりと口を上げて間抜けな表情でナターシャを見ていた。 「あなた、とっても愉快な顔をしているわよ」  おかしそうに笑うライラにハッとしたユーリは、顔を簡単に振ってナターシャを見つめた。 「我が子ながらとてもかわいい。かわいいがこれでは悪い虫が――!?」 「これだけかわいいとそういうのが寄り付いても仕方がないね。ねえ、ジル」  ウィルが隣に立っている息子を肘で小突いていると、少し照れたようにジルは笑った。 「ああ。今のナターシャはとてもかわいいから」 「……どうも。それよりそろそろ時間じゃないの」  時計に視線を走らせて、一人さっさと家を出ていくナターシャにライラとアスティアは顔を見合わせて笑った。通り過ぎていく際に見えた、少し赤くなっていた耳が見えたのだ。 「ほら、みんな。早く行こう。今日は、ナターシャの大事な日なのだから」 「はやく行きましょう!」  ライラとアスティアはそれぞれの夫の手を取って家を出ていく。その後ろをジルとクルトがゆっくりついて行く。  舞台に近づくごとに聞こえてくる音に、二人(ジルとクルト)の顔は楽しそうに歪んでいく。 「きみはナターシャにどうなってほしい?」 「それはこの後分かりますよ。それともすでに分かってるんじゃ?」  そう言ってジルはナターシャの側に歩いていく。
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