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戸惑うナターシャの手を引き、クルトが向かった先は里の外れにある洞窟だった。
その前には二人の男が立っている。
「なんでここに! どこに行くんだ!」
男たちの間を通って奥に入っていくクルトに、ナターシャは声を上げた。
無言で先に進むクルトに、「止まれ!」と声を上げても止まらない彼に、ナターシャは嫌な予感しかしなかった。
「クルトっ!!」
「ここまで来たら分かるんじゃないか? ここがどういうところか。俺は言っただろう。その役目を担ってやると」
目を見開いてナターシャはクルトの後ろを見つめた。
壁に掛かっている蝋燭の光に照らされて見えるのは寝心地がよさそうなダブルベッド。ベッド脇にはサイドテーブルがあり、その上には水差しと二つのコップが置かれている。枕元にはティッシュと心ばかりの避妊具まであり、ナターシャはここがそういう場所だと理解した。
「ふ、ざけんな! なんでぼくが男に!」
踵を返して戻ろうとするナターシャの手を掴んでクルトは引き留める。その手は思ったよりも力が強く、振りほどくことが出来ない。
「知っていたか? 本来ならこの役目はジルがすることになっていた。だが、土壇場になってあいつは「出来ない」と言った。「ナターシャの意思を無視できない」と。おまえはずっと男になりたいと言っていたな。だが、これが里の意思だ。そしてお前が見た神の意思だ」
「うるさい! そんなもの知るか。ぼくは男になる! 男になって、そして――」
「無理だ。お前には守れない。お前は……男にはなれない」
「知らない。離せよ!」
どうにかしてクルトの手を離そうとするナターシャに、先程よりも力を込めてベッド近くまで連れてくると、そのままベッドの上に放り投げた。
コップの中に入っていた液体を口に含むと、ナターシャが起き上がる前に体を押さえつけ、ナターシャの口の中に液体を流し込んだ。その液体を吐き出さないように口を押えて飲み込むのを待った。
「ゴホッゴホッ! なにを、飲ましたの……?」
「媚薬と、少し体の動きを鈍くするものが混ざったものだ。しかも、即効性があるようだな」
少しずつ赤くなる頬に、潤んでいく瞳。体を起こすのも辛いのか浅く何度も息を吐き出す。
「大丈夫だ、すぐに済む」
「い、やだ――!!」
抵抗するナターシャの言葉を飲み込むようにクルトは、ナターシャの上に覆いかぶさった。
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