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   体中がギシギシと痛み、その痛みでナターシャは目を覚ました。  指を動かすのでさえ億劫で、起き上がることもままならない。  腰に響くような痛みが続き、それが昨夜何があったのかを物語っている。 「起きたか」  頭上からした声にナターシャはゆっくり首を動かし、自分の腰に腕をまわしている(クルト)を睨み付けた。 「あ、んた」 「あまり声を出さない方がいい。昨日の行為で随分声を枯らしているからな」  クルトは力の入らない体で抵抗するナターシャの体を組み伏せ、「いやだ、やめろ」と言う声さえ封じ込めその体を暴いていった。  完全な男と、男でも女でもない両性体では力の差は歴然で、極めつけにナターシャは薬を盛られていた。  男に抱かれたというだけでナターシャは、怒りで頭がどうにかなりそうだった。 「おまえは疑問に思っていたな。どうして夜通し行われるのか。これが、その答えだ」  色々な感情がない交ぜになっているナターシャは、唇を噛んでいる。その唇にそっと指を這わせクルトはナターシャを真っ直ぐ見つめた。 「両性体には避けては通れない儀式だ。準成人式の日に夜通し掛けて性を選ぶ為の儀式を行う。――男を選ぶなら女を、女を選ぶなら男をパートナーとし、両性体の初めての相手とする。そして、両性体はパートナーとは逆の性別へとなる」 「ぼくは……」 「ナターシャ、おまえは俺に抱かれた。分かるだろう? おまえは女になる。遅かれ早かれ、な」  クルトはベッドから起き上がると脱ぎ捨てていた上着を羽織った。 「その様子だと暫く体を動かせそうにはないな。少し待っていろ」  ベッドがある場所より奥に入っていったクルトは数分後、湯気が立ち上る桶を抱えて戻ってきた。  お湯につけて絞ったタオルを汗をかいているナターシャの体を丁寧に拭いていく。抵抗するだけの体力もないのかナターシャはされるがままにされている。  ナターシャの体を拭き終わると、床に落ちている服を拾いナターシャに着せていく。 「飲んだ方がいい」  コップを差し出すクルトを見つめるナターシャにクルトは苦笑した。 「これには何も入っていない」  クルトからコップを受け取り水を飲んだ。 「……ぼくは、男に、なる。男になりたいんだ。ぼくは女にはならない」  口の周りについた雫を拭いながら自分に言い聞かせるようにナターシャは言った。
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