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「男にならなくても、守れるだろう。何故そこまで男にこだわる?」
「ぼくにとってアレイラは特別だ。アレイラを守れるぐらい強くなりたい。女じゃなく、男としてぼくはアレイラを守りたい。アレイラはぼくのすべてだ」
「アレイラばかりだな」
そう呟くとクルトはナターシャの腕を取り、立ち上がらせる。
腰の痛みに軽く呻くナターシャに、その腰にそっと手を添え、「大丈夫か?」と聞いた。
「大丈夫に見えるなら、あんたは眼科に行った方がいいよ」
「それだけ憎まれ口を叩ければ十分だと思うがな」
ナターシャをお姫様抱っこし、クルトは入り口に歩いていく。急に抱き上げられたことに驚いたナターシャはクルトの首に抱き着いた。
「急に抱き上げるな、ばか」
「すまないな。おまえが腰を痛そうにしていたのでね。そのまま首に抱き着いてろ。落ちるぞ」
ナターシャは嫌そうにクルトを睨んだが、大人しく腕の中に納まっていた。
洞窟の外に出ると、昨夜入り口にいた男たちはすでにいなかった。広場ではたくさんの大人たち――主に男だが――が、酔いつぶれて寝ていた。その間を縫うように歩き、ナターシャの家に向かった。
ほとんどの竜族がまだ寝ているのか、とても静かだった。
ナターシャの家に着くと、片手でナターシャが落ちないよう抱きしめ、クルトはドアを開けた。
開けた瞬間、爆発したかのような音が響く。
二人の目の前ではひらひらと色とりどりの紙吹雪が舞い、ナターシャの両親やジルたちがクラッカーを構えていた。ジルを除いて全員にこにこと笑っている。
「おめでとう、ナターシャ!」
「とうとうナターシャも女の子かあ」
「一緒に買い物とか行くの楽しみだね、ライラ!」
「本当にね! 色々着せたい服があるのよ!」
親たちがそう言って盛り上がる中、子供たちは置いてけぼりだった。
クルトはそっとナターシャを床に下ろし、労わるように腰を撫でた。
「両親たちは気が早いよね。まだ女になっていないのに」
苦笑しながら近づいてきたジルのお腹にナターシャはこぶしを入れた。
「ゴホゴホッ! ちょ、ナターシャ! なんで殴るんだ!」
「それが分からないほどジルは馬鹿じゃない、だろ?」
口の端を持ち上げてナターシャは言う。その目は全く笑っていない。
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