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 里からジルヴィア中央国立学園都市に戻ってきたナターシャは、相変わらずよく授業をさぼり、時間を見つけてはシュティーヘル図書館に足繁(あししげ)く通っている。  シュティーヘル図書館は、この学園都市に唯一ある図書館で、世界で有数の蔵書率を誇る。図書館は五階建ての建物で、たくさんの本が壁一面に広がっている。二階の一角にはパソコンルームがあり、誰もが自由に利用することが出来、調べ物などがある場合によく利用されている。  ナターシャはパソコンを操作しながら、表示されているものを端から端までじっくり読んでいく。 「……やっぱりないか……」  画面には「Not Applicable」と表示されている。  PCの電源を落としたナターシャは、民族学の本がある棚に向かった。  本棚には「獣人族(ティア)の今昔」、「人魚(モルーア)の生態」や「それぞれの恋愛観」などたくさんの本が並んでいる。  竜族について書かれている本を一冊手に取り、パラパラページを(めく)っていく。竜族の種の種類や、火竜族との確執――簡単な記載のみだが――について、昔と今の食生活の違いなどは書かれているが、ナターシャが知りたい内容は書かれていない。それらしい本を手に取ってみても、記載が一つもない。 「やっぱりないね」 「これだけ探してもないってなってくると、なあ?」 「禁書室か」  三人組のサイ・ボーン高校の男子生徒たちが近くで話している。  その側でページを捲りながらナターシャは聞き耳を立てる。 「禁書の本を読む時って、担任、学長の許可証がいるんだっけ?」 「あと学校代表のもな」 「あー、それだけ集めるの面倒だな」  男子生徒たちは話しながら歩いていく。 「……確かに面倒だな」  本を元に戻し、ナターシャは一階にあるカウンターに向かった。  禁書室にある本を確認することができるのは、図書館のスタッフだけが操作することができるパソコンのみだ。  スタッフに禁書の蔵書リストをもらうと、目を通していく。十ページに渡るリストの一つ一つを確認すると、一つの本の名前に印を付けた。  Weneine Amphibie Geschle wahlte《両性体が性を選ぶとき》。  この本以外には両性体についての記載はありそうにない。 「ジルに許可証をもらうか」  ナターシャは自室にいるだろうジルのところに向かった。  ドアをノックしてすぐジルがドアを開けた。
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