28人が本棚に入れています
本棚に追加
ーー禁書保管室。
シュティーヘル図書館の最上階、西側にそれはあり、保管室までには三枚の扉が設けられている。
それぞれの扉にはICチップが埋め込まれており、禁書の閲覧許可が下りると虹彩認証登録と三つのコードが発行される。その三つのコードは扉ごとに違い、扉の左にあるパネルにコードを入力後、虹彩認証でクリアすると次の扉へ進むことができる。
ただ、一度でもコードの入力を間違えると二回目以降使用できず、禁書閲覧許可証を再度もらわないといけない。
ナターシャは慎重にコードを入力していく。入力を間違えてしまうともう一度許可証をもらわなければいけない。
「認証完了しました。第二の扉へどうぞ」
機械の声が響く。第一の扉が開いた少し先に第二の扉が待ち構えている。
第二、第三の扉を通り抜けると、広々とした部屋があった。
扉を通った右隣には大理石でできた台座の上にパネルが設置されている。壁一面に本棚が並んでおり、部屋の中央には六人掛けの机と椅子が置かれている。
ナターシャ以外には今誰もこの部屋にはいない。
肩に掛けていたバッグを机の上に置くと、パネルに文字を入力していく。エンターを押すと、画面には「検索中」の文字が表示され、数秒後「ヒットしました」と文字が表示された。
文字が表示されると、本棚の一角が光り、ゆっくりその光が浮かび上がる。
その光は机の上で止まると、ゆっくり消えていく。
ナターシャが机に近づくと、光が消えた後には一冊の本が置いてある。その本を手に取ってパラパラとページを捲っていく。
本に集中しているナターシャは、部屋に人が入ってきたことに気付いていない。夢中でページを捲っていく。
「これだっ!!」
「ぶはっ!!」
ナターシャが本から顔を上げると、目の前の席には肩を震わせて笑う青年が座っている。
「……あれ、たしか……」
「笑って悪い! 俺が来てから一時間ぐらい集中して読んでて俺に気付いていないようだったからな。あの時は世話になった」
青年は一度ナターシャとジルが狼が暴走した時に協力を仰いできたレクイン高校の生徒だ。
「ちゃんと自己紹介していなかったな。俺はサハン。サハン・ビシャルだ」
片手を差し出して言う彼に、ナターシャはその手を握り返した。
「ぼくはナターシャ・ヴェイン」
簡単に自己紹介をするとサハンの視線はナターシャが読んでいる本に向かう。
最初のコメントを投稿しよう!