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「ふぅ……お疲れ、ダイン」
茶髪の少年が手を差し出すが、
「お疲れじゃない! もう一度勝負だマルス!!」
ダインが怒りながら手を叩いた。
そうダインの目の前にいる少年こそ、マルス・ドゥリン・バンパイア、あの幼かったマルスだ。
今ではすっかり大きくなり、165㎝位まで背が伸びた。
目は日のバンパイア亡き母、ティーアにそっくりで、パッチリな二重で少しおっとりした感じだが、後は夜のバンパイアであり、そして頂点に立つ夜帝(やてい)であるエブラに似ているが、ただ髪形だけはどことなく、どちらにも似ていなかった。
「嫌だよ、98勝10敗1引き分けだし、またやった処でオレに白星また増やすだけだぜ?」
少しエブラに似た口調で、ダインに言ってやった顔をするマルスは、あの頃の面影が無いような気がした。
「なんだよ! その自信過剰は!? すぐにお前なんか……」
その言葉に過剰反応し、更に怒ったダインを、審判していた男性が近寄り、
「よせダイン、約束は約束だ!
これ以上やっても、お前が惨(みじ)めになるだけだぞ!」
ダインの頭を叩いた。
「父さん! でも良いのかよ、マルスを外に出して?」
叩かれたダインは、少し頭に上った血が下がってか、そう口にした。
「良いだろ? 私にきちんとその相談もしてきたし、無論村長にも許可がおりているんだ」
審判していたダインの父は、前から了解していたようだ。
そうなのだ、この戦いはマルスが外に出たいと言って、ダインが自分を負かせたら、良いと言ったのが発端なのだ。
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