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その夜の事だ。
マルスは明日の為に必需品を腰に着用する鞄に、詰め込んでいた時だ。
部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。
最初アレスかと思い、
「はーい、なんだよアレス……村長?」
扉を開けてみてびっくりした。
部屋の前に立っていたのは、マルスより少し小さい女の子だ。
「ご、ごめんなさい!
マルス君部屋に居るって……村長に言われて……」
女の子は顔を赤らめ、マルスを直視出来ぬまま一生懸命話していた。
その子は長い黒髪を三つ編みにし、肌はとても白く、目は二重の透き通る青、ふんわりした可愛らしい女の子だ。
「カリヌじゃん!? どうした?」
「お、お父さんからマルス君が……里の外へ出ちゃうって聞いたから……」
カリヌと言う少女は下を向いたまま、顔を赤らめていた。
どうやら挨拶に来たようだ。
「大丈夫だよ、1週間位したらまたココに戻るし……てか、戻らざる終えなくなったけど……」
マルスは頭を掻きながら笑って話すも、顔は強張っていた。
どれほどアレスの力が強いかが分かる瞬間だ。
「で、でも……ディダって言うドラゴンを見付けたら、ここから出ちゃうって噂だから……」
今にも泣きそうな声にマルスは困り果て、
「あっでもさ! 世界広いし、早々見付からないかも……あぁでも、見付かって一緒に暮らすことになっても、またココに遊びに来るし!」
一生懸命にカリヌに伝えると、
「絶対だよ……」
涙目になっていたカリヌは笑顔でマルスを見た。
「う、うん!」
少しだけマルスは困った笑顔で、カリヌの頭を撫でた。
ふと小さい頃を思い出す。
ディダの大きな手を……。
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