第1話 出発

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  その夜の事だ。 マルスは明日の為に必需品を腰に着用する鞄に、詰め込んでいた時だ。 部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。 最初アレスかと思い、 「はーい、なんだよアレス……村長?」 扉を開けてみてびっくりした。 部屋の前に立っていたのは、マルスより少し小さい女の子だ。 「ご、ごめんなさい! マルス君部屋に居るって……村長に言われて……」 女の子は顔を赤らめ、マルスを直視出来ぬまま一生懸命話していた。 その子は長い黒髪を三つ編みにし、肌はとても白く、目は二重の透き通る青、ふんわりした可愛らしい女の子だ。 「カリヌじゃん!? どうした?」 「お、お父さんからマルス君が……里の外へ出ちゃうって聞いたから……」 カリヌと言う少女は下を向いたまま、顔を赤らめていた。 どうやら挨拶に来たようだ。 「大丈夫だよ、1週間位したらまたココに戻るし……てか、戻らざる終えなくなったけど……」 マルスは頭を掻きながら笑って話すも、顔は強張っていた。 どれほどアレスの力が強いかが分かる瞬間だ。 「で、でも……ディダって言うドラゴンを見付けたら、ここから出ちゃうって噂だから……」 今にも泣きそうな声にマルスは困り果て、 「あっでもさ! 世界広いし、早々見付からないかも……あぁでも、見付かって一緒に暮らすことになっても、またココに遊びに来るし!」 一生懸命にカリヌに伝えると、 「絶対だよ……」 涙目になっていたカリヌは笑顔でマルスを見た。 「う、うん!」 少しだけマルスは困った笑顔で、カリヌの頭を撫でた。 ふと小さい頃を思い出す。 ディダの大きな手を……。  
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