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「楓紀(ふうき)」
目の前の少女は俺の名を呼ぶ。彼女の前にはノートや参考書が並んでいる
「な、なんぞなもし?」
「私は、楓紀が宿題手伝ってほしいって言うからこうして一緒に勉強してあげてるんだよ。…なのにどうしてアイス食べながらテレビ観てるの? 」
「やだなぁ美華(みか)、効率の良い勉強には休憩が必要なんだぜ」
「 勉強始めてから30分も経ってないけど」
「そんだけ持ったら良い方だ。俺のクソ暑い部屋だったら5分も持たないし」
「……」
そこまで言うと、その少女…美華はリモコンを何処からともなく取りだし、テレビの電源を落とした。球場の歓声の代わりに、窓の外の蝉の大合唱が美華の部屋の中に響き渡る。
「な、何をするだァーッ!ウチの地元の攻撃だったんだぜ!?」
「休憩終わり。夜のニュースででも確認しなさい」
「うう、ご無体なぁ…」
「…本当に、昔から変わってないんだから」
そう、俺達は小学校の頃からの幼馴染み。小中高と一緒という、腐れ縁もいい所な仲なのだ。
そして彼女の指摘通り、俺は物心ついた時には既にこの美華に宿題を手伝って貰っていた。そのせいかどうかはわからないが、年頃の高校生なら自分の家に異性を招き入れることは憚られるのだろうが、俺達は何の気兼ねもなく互いの家を行き来しているのである。
「へいへい、悪うごぜーました…ガリガリ」
「食べながら喋らない」
残りのアイスを放り込みつつ喋る俺に美華が一喝。お前は母ちゃんか…って、痛てててて。俺の頭に、冷たくじんわりと鈍痛が広がった。これ、アイスクリーム頭痛って言うんだっけか。
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