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こうして毎年の事ながら、宿題はほんの少ししか進まないまま勉強会はお開きになった。その後、美華ママのご厚意で夕食をご馳走になった俺は大満足で帰路につく。
美華の家から俺の家までのアスファルトの道。首の後ろで手を組んで、俺は空一杯に広がる星を眺めながら、ほんの少しだけノスタルジックな気分で思案に耽った。
戸羽楓紀と鈴川美華。物心ついたときには既にコンビのような扱いを受けていたような俺達も、今年で終わりを迎えるのかもしれない。
勉強会で聞いた話によると、美華は暫くしたら塾の夏期講習に通うため、俺の宿題の面倒を見てやれないとのことだった。
だが、さすがの俺でもその程度でコンビ解消するだなんて短絡的過ぎる考えはしない。問題はその後である。
「でも、なんで急に塾?お前の学力だったらそこいらの大学なんて余裕だろ」
「…私ね」
美華は少し間を置いて、次の言葉を紡いだ。
「東京の大学に行きたいの。自分の力を確かめたいから」
俺は二の句が告げなかった。急に目の前にいる少女が遠い存在に思えた。まるで虚像と会話しているかのような、やり場のない喪失感を覚えたのである。そして同時に、このままボヤボヤしていたら、美華はどんどん遠い存在になってしまう。そんな焦燥感も俺を襲った。
ーだが、こんな俺に何が出来るだろう?ー
夜風に当たれば少しは考えが纏まるかと思ったが、この8ビットの頭脳で良案が浮かぶ訳がなく。結局あっという間に我が家についてしまったのであった。
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