2人が本棚に入れています
本棚に追加
今、俺に美華にできること。色々考えは浮かぶが、それらはシャボン玉のようにあっけなく消えてしまう。俺は髪をかきむしり、手元の漫画雑誌を何の気なしに手に取った。もしかして、勉強机にこれが置いてある時点でもう勉強できていないのではないだろうか。
(どうせ今やるなら、季節感があるものが良いよな)
夏は娯楽が多い。代名詞も多い。片っぱしから候補を挙げていけば、いつかは答えに辿り着くはずだ。俺はそう思い、雑誌を閉じて腕組み。いかにもアホそうな考えるポーズをとった。
プールは…ダメだ。水着買い替えないといけないし、近所のは数年前に潰れたから隣町に行かないと無いんだった。
海も山も近所にない。平凡で閑静な住宅街で育ったことを、こんな形で恨むことになろうとは。
花火大会…ダメだ。俺もあいつも人混みは好きじゃない。似た理由で縁日も却下か。
(…なんつーか、引きこもりもいいとこだよなぁ)
もしやあいつが勉強できるようになったのは、この町に娯楽が少なかったからなのかもしれない。
だが、それを言い訳にしているばかりにもいられない。何かこの町に娯楽は無いか…?
と、そこで我ながら名案が浮かぶ。映画に行こう。館内は涼しいし、このシーズンだったらホラーものの一つや二つはやってるだろう。近くのフードコートで飯もおごってやろう。
(完璧だ…)
自分の顔がどや顔になるのを感じながら、俺は財布を開ける。…そして、自分の目を疑った。
「金が無い…だと…?」
最初のコメントを投稿しよう!