2人が本棚に入れています
本棚に追加
「お疲れ様でしたー」
「おう、いい加減オーダー間違えないようにしろよな」
店長に挨拶をし、バイト先を発つ俺。何の気なしに覗いたスマホの日付を見て、ため息がこぼれる。
夏休みが終わるまで一週間を切っているというのに、俺は一体何をしているんだろう。このバイトを一念発起して始めたのだって、美華と映画に行くための資金を得るためだったのに、その肝心の美華と連絡が取れないのでは本末転倒も良いところだ。…だが、アイツもさぞ忙しいことだろう。こっちから連絡したって迷惑に決まってる。
「…はー、どうすりゃいいんだ」
独り言を吐き、俺は偶然通りかかった公園のブランコに腰掛ける。昼間は子供たちが賑やかに遊ぶこの場所も、夜になると不気味なくらい静まりかえっている。漆黒の夜空に浮かぶ切れ切れになって漂う群青色の雲の切れ間から乳白色の月光が差し込み、俺の思考を後押しする。
…軽率だった。こんなんだったら片意地張らずに、アイツに宿題でも教えて貰うんだった。それだったら、こんなにもモヤモヤした気分にならずに済んだだろうに。
「あー、くそっ!」
「あっ…!」
憂さ晴らしもかねて、月に向かって悪態をついた途端、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。その声が聞こえた方向を振り返ってみると…そこにはやはりアイツがいた。
「…よ、よう。美華」
「…うん」
パンツルックの美華が、少し不機嫌そうな顔でそこにいた。
最初のコメントを投稿しよう!