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祖母や私の叔母達は、私の誕生にひどく喜びました。 私の誕生は、祖父の死からこれまで我が家に続いてきた暗い雰囲気を打ち消すような、そんな出来事だったのです。 私の名前には、父の一族の長男にしか許されていない通字である「隆」を冠する名が付けられました。 大変名誉な事だと思っています。 嫌な事に直面したり、気に障る事をされたとしても、私の名前の伝統を思い返す度に、この甘美な名誉の響きはすぐに私の自尊心を満足させてくれます。 そして、満足した私は、その場を適当に誤魔化すのです。
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