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結衣が選んでくれたワンピースは、いつも行くお店のショーウインドーに飾られていた。
蓮に別れを告げた時に降っていた雪の色に似ている気がして、あの日の出来事を忘れないために購入した。
でも袖を通すと泣いてしまいそうで、どうしても着る事が出来なかった。
適当に詰め込んだ洋服の中に、このワンピースが入っていたなんて思ってなかった。
「美桜、まだ泣きそうな顔してるわね?大丈夫?」
「うん、大丈夫。ごめんなさい。すぐに着替えるから。」
私は、結衣に心配をかけるためにこの地へ帰って来た訳じゃない。
『R』の事を調べるために帰って来たんだから、思い出に浸って泣いている場合じゃない。
「うん!!私の思った通りよく似合ってるわ。」
「ありがとう。」
結衣が一緒に居てくれたおかげで、ワンピースに袖を通す事が出来た。
それが凄く嬉しい。
鏡に映る自分の姿に涙が溢れそうになる。
結衣に甘えて頼り続ける事は出来ないから、一人で過去を乗り越えられるようにもっと強くなりたい。
私は強いパパと優しいママの娘だから、どんなに辛い事があっても負けたくない。
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