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「みい、久しぶりだね?元気だった?」
「聖也君――…、」
十年前と変わらない優しくて柔らかな聖也君の声。
王子様のような容姿に変わりはないけど、大人の男性になったと思う。
「みい、聖也君って何?昔みたいに、せいちゃんって呼んで欲しいな。」
「……」
昔と同じように、せいちゃんって呼んでいいの?
何も告げずに姿を消した私を、今でも幼なじみだと思ってくれているの?
「みい、どうしたの?呼んでくれないの?」
「せいちゃん――…、」
「うん、それでいい。みいが元気そうで安心したよ。」
せいちゃんは私の言葉を聞いて嬉しそうに微笑むと、真綿で包むように優しく抱き締めてくれた。
「ふふ。聖也は、相変わらず美桜に甘いわね?」
「結衣、嫉妬してるのかな?」
「馬鹿な事言わないで。美桜が可愛くて仕方ないのは、私も一緒なのよ?嫉妬する訳ないでしょう?」
「ははっ、そうだった。すっかり忘れてたよ。結衣は、みいを溺愛してたね?」
「そうよ。だから勘違いしないで。」
「ふっ。ああ、分かったよ。」
私の頭上で繰り広げられている二人の会話に、恥ずかしさが込み上げる。
結衣とせいちゃんは、昔から私の事で喧嘩ばかりしていた。
私、もう28歳なんだよ?
子供扱いされてる事が凄く恥ずかしい。
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