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蓮が足を進める度に少しずつ近付く距離が怖くて、せいちゃんと結衣の後ろに隠れた。
「聖也、結衣、よく来たな。」
蓮の低くて甘い声を聞くのは十年振り。
どうしよう。
やっと涙が止まったのに声を聞くだけでまた泣きそうになる。
「おい、蓮。婚約者はどうした?一緒に居なくていいのか?」
「そうよ!!よく来たなじゃないわよ!!婚約披露パーティーで婚約者を置いて挨拶周りする人なんていなわよ?」
「あんな女はどうでもいい。それより……、」
「ん?どうかしたのか?」
「二人の後ろに隠れてる女性に会わせてもらえないか?」
ど、どうしよう。
『R』の事を蓮に確かめるために此処まで来たのに、蓮を前にしたら怖くて身体が震える。
幼なじみとして受け入れてもらえなかったら此処には居られない。
追い出されてしまったら『R』の事を確かめられなくなる。
私は早く解決して元の生活に戻りたいの。
大丈夫。
いつも仕事で『ミオ』を演じているように、幼なじみの『綾瀬美桜』を演じればいいだけ。
蓮に何を言われても泣かない。
私は幼なじみとして蓮の婚約を祝福しに来たんだから。
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