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「……失礼致します。藤堂様、そろそろパーティーが始まるそうです。」
いきなり扉を開けて入って来た男性が発した言葉に、緊張で身体が震え出した。
「ああ、分かった。すぐに行くよ。」
せいちゃんの柔らかな声を聞いても、身体の震えは止まりそうにない。
十年振りに蓮と会えるのは嬉しい。
でも、冷たい瞳で見られたらどうすればいいの?
十年前に別れた女が婚約パーティーに参加するなんて嫌かもしれない。
どうしよう。
蓮に会いたいけど怖い。
凄く怖いよ。
「みい、行こうか?」
「美桜、行くわよ?」
「っ、わ、私――…、」
声が震えて上手く喋れない。
この部屋から出れば蓮に会えるのに、足が震えて一歩が踏み出せない。
「みい、どうした?顔色が悪い。」
「っ、せいちゃん。わ、私――…、怖い。蓮に会うのが怖いの!!」
私の傍まで歩いて来たせいちゃんに抱き着くと、優しく背中を撫でてくれる。
「みい、大丈夫だよ。何も心配しなくていい。」
「で、でも……、蓮は私に会いたくないかもしれない。凄く怖いの……、」
私、どうすればいいの?
こんな気持ちのまま蓮に会ってしまったら、きっと泣いてしまう。
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