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「あら、主役二人の登場みたいよ?」
会場内のざわめきと結衣の声に促されて入口に視線を向けると、十年振り見る蓮と婚約者の女性が会場内に入って来た。
「蓮――…。」
名前を呼ぶだけで胸が苦しくなる。
遠くから見つめるだけで涙が溢れてしまう。
別れた日からずっと忘れた事なんてなかった。
毎日毎日、蓮を想ってた。
蓮、ずっと逢いたかった。
逢いたかったの……。
「みい、大丈夫?」
「っ、せいちゃん……ん、苦しいよ……、」
「みい、大丈夫だから。泣かなくていい。」
「……ん、ごめんなさい……っ、涙が止まらないの……、」
せいちゃんが指先で涙を拭ってくれるけど、次々に零れ落ちる涙は止まりそうにない。
「みい、このハンカチで涙を拭いて。」
「……ん、ありがとう。」
せいちゃんから差し出されたハンカチで涙を拭いながら、招待客に挨拶をするためマイクを手にした蓮に視線を向けた。
「皆様、本日は私の婚約披露パーティーに来て下さりありがとうございます。後程、私の婚約者を御紹介させていただきますので、ごゆっくりお過ごし下さい。」
蓮は会場内を見渡して挨拶を済ませると、離れた場所に立っていた婚約者の女性を無視して、私達が居る場所に向かって歩いて来た。
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