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「みい、大丈夫?」
「美桜。行きたくないなら此処に居ていいのよ?」
「ううん、大丈夫。行って来るね?」
困ったような表情で私の様子を伺う二人に笑顔を向けて、蓮が待つ場所へ足を進めた。
蓮の考えは分からないけど、本当に婚約する訳じゃないんだから、この場さえ切り抜ければ後はどうにでもなる。
「蓮、お待たせしてごめんなさい。」
「ああ。美桜、挨拶出来るな?」
「ええ、大丈夫よ。」
私の肩を抱き寄せて耳元で囁いた蓮の言葉に頷きマイクを手にした。
「皆様、お待たせして申し訳ありません。綾瀬美桜です。この度、佐久間蓮さんと婚約する事になりました。宜しくお願い致します。」
静まり返った会場内を見渡し笑顔で挨拶を済ませて頭を下げた。
「美桜、上出来だ。」
「……」
蓮の言葉に何も言い返せない程ドキドキしてる。
人前で挨拶をするなんて初めての事だから、平静を装っていたけど実は凄く緊張した。
本当に婚約する訳じゃないって頭では分かってるのに、蓮の婚約者として挨拶した瞬間、心が震える程幸せで涙が溢れそうになった。
「美桜、聖也達の所に戻ろう。」
「はい。」
蓮から差し出された手を握り、招待客からの祝福の言葉を受けながら足を進めた。
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