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「美桜、俺の願いを聞いてくれないか?」
「……」
「俺は美桜の笑顔を守りたい。俺の手で美桜を幸せにしたい。それが俺の願いだ。」
「っ、蓮――…。」
蓮の強い想いが私の心に伝わってくる。
幸せすぎて涙が溢れる。
「……っ、ふ……っ、」
蓮のパジャマの胸元に私の涙が染み込んでいく。
「美桜、泣くな。」
私を抱き締める蓮の腕の力が強くなる。
それが嬉しくて涙が止まらない。
「……っ、ん、……っ、」
この先の人生を蓮と一緒に歩いて行けたら凄く幸せだと思う。
でも『あの人』から逃げるのは難しい。
私の笑顔を守り幸せにしたいと言ってくれた蓮を傷付けたくない。
十年前のように別れを告げるような事はしたくない。
「蓮の気持ちは嬉しい……っ、でもごめんなさい……っ、」
蓮の気持ちから逃げる私を許して。
二度と蓮に別れの言葉を言いたくないの。
「美桜、返事は全て片付いてからでいい。今決める必要はない。」
「私の気持ちは変わらない……っ、ごめんなさい。」
「美桜、分かったからもう泣くな。」
蓮は私の顔を覗き込んで涙を拭うと、私の瞼にキスをして優しく微笑んだ。
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